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戦場での一件から、なんとなく緒方さんに会い辛くなってしまい
カイソクオーを応援に行くことも、怪獣に襲われることもしなくなりました。
そして、あれから5年の時が経ち…………
19歳。僕はもうすっかり働ける年齢になっていました。
今日は地元のある工場に面接に来ています。
本当は企業に就職したかったのですが、このご時世で高卒の僕を雇ってくれるはずもありません。
もしあの時ロボットやミリタリーにうつつを抜かさず、きちんと勉強していれば…………
……いや、よそう。今更昔のことを言っても仕方ない
頭の中に浮かんできた後悔の念を、必死に打ち消しました。
今は工場の中で人事担当の佐藤さんが来るのを待っているところです。
時計を見ると、面接の開始時刻を大幅にオーバーしていました。
佐藤さんからは30分ほど前に「少し遅れるからそこで待っていてくれ」という電話があったきり音沙汰なしです。
せっかく紙一重で間に合わせたのに。
と言うのも、今日はだいぶ余裕を持って出発したはずなのに、途中で道に迷ったせいで到着がギリギリになってしまったのです。
面接者には事前に工場の位置を示した地図が配られていたのですが、この地図では
目印となる筈のボウリング場とホームセンターの位置があべこべになっていたためでした。
たまたまこれに気付いてなかったら、僕は未だに近くの路地をウロウロしてた事でしょう。
そう考えればまだラッキーだったのかも知れませんが……。
それにしても佐藤さん、本当に遅いな……
そんな思いを巡らせつつ工場の中を見渡していると、一人の作業員の方と目が合いました。
……思わず二度見してしまいました。
あの人はまさか。いや、そんな筈はない。でも……
僕の頭の中を混沌とした感情が渦巻いてるうちに、向こうもこちらに気付いたようです
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緒方みつる「！？キミは……やあ、久しぶりだね。」
緒方さん！！どうしてこんな所に……
緒方みつる「ははは、『こんな所』とは心外だな。
まさか、面接を受けに来たのがキミだとは思わなかったよ
あれからどうしていたんだい？」
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髭が生えていた上に汚いツナギを着ていたため気付かなかったのですが、
その人は確かにカイソクオーのパイロット・緒方みつるさんでした。
よく見ると、作業員の中にはカイソクオーのメカニックだった下條アキラや
カイソクオー開発者の水島博士までいるようです。
彼らのだるそうに作業する様子からは、まるで当時の面影が感じられません。
僕が後ろめたさを感じつつあれからの自分のことを話すと、
緒方さんもこれまでのいきさつを話してくれました
彼の話では、カイソクオーは段々と強力になっていく怪獣達に後れを取るようになり
ついには敗れてバラバラになってしまったそうです。
ちなみにその怪獣は自衛隊の新兵器が片付けたとのことでした。
それから、あの時のスタッフは皆ここで働いているそうです。
僕の見てない間に、カイソクオーは……
僕が大好きだったカイソクオーは…………
気付くと、僕の目からは涙が溢れていました
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緒方みつる「おいおい、どうしてキミが泣くんだ」
で、でも僕は…………
緒方みつる「……もしかして、あいつの最期を看取れなかったことを後悔しているのかい？
そんな事を気に病む必要はないよ。あいつも戦いの中で散れて本望だったはずさ。
それに、あいつはある意味ではまだ生き続けてるんだよ。
現に、今だって僕たちの……」
心の中に、ですか……
ビーッ
ビーッ
！？
緒方みつる「！……いかん、キミは皆と工場の外に出ていなさい！！」
？は、はい、わかりました！！
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何か事故でもあったのでしょうか。
突然けたたましいブザーが鳴ったと思うと、緒方さん達の顔つきが瞬時に変わりました。
わけもわからぬまま水島博士たちと一緒に工場の外に出ると、勢いよく出入口のシャッターが閉じられました。
ウィィィィィィン
ガシャン！！
仰天したのは次の瞬間です。
工場の上部からどこか見覚えのある、顔のようなものが飛び出してきました。
さらにガッシャガッシャと工場の壁の形が変わっていきます
ま、まさか、まさかこれは……！！
顔のようなものの窓からチラと見えた緒方さんは、ツナギを脱いで着替えているところでした。
僕の隣ではいつの間にかメガネをかけた下條さんが変形の様子を逐一チェックしているし、
白衣姿の水島博士が高笑いしながら何やら複雑な機械を操作しています。
これは、この姿はまるっきり、5年前の……！！
僕が思わず息を呑んでいると、路地の右端からボウリング場が
左端からホームセンターが飛んできて、みるみる腕のような形に変形していきます。
それと同時に、工場の前に停めてあった大量のクレーン車やブルドーザーが2か所に固まって
連結し始めました。こちらはまるで足のような形状です。
続いて耳をつん裂くような轟音が響き、周囲が熱くなったと思うと、
工場がふわりと浮かび始めはりました
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ガシャーン！
ガシャーン！
ガシャーン！
ガシャーン！
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...........
ガッキーン！！
「合体完了！！」
「シャイニングゴッド?、ここに見参！！」
う・・・
うわあ、超巨大変形合体ロボや！！
ただの工場とホームセンター、ボウリング場と重機から瞬く間にエレガントなロボが完成したで！
しかしこれは凄まじいロボや！なんせ合体前の5つのパーツ全てがカイソクオーの大きさを上回ってるからな！
つまりは合体後のこのロボは最低でもカイソクオーの5倍以上の大きさや！！しかしこれ程巨大になりながらも、
カイソクオーならではの機動性は健在やし、その容貌にも初代カイソクオーの意匠が残されとる！
こいつの名は「シャイニングゴッド?」と言うよりむしろ「キングカイソクオー」で決まりやな！！
『フハハハハ、さあ最後の決着をつけるぞ緒方よ』
ああーっと、10時の方角から凶悪な怪人が現れたで！こちらもキングカイソクオーに比肩する大きさや！！
その上ただ巨大なだけじゃなく、両手のドリルを始めとする強力な武器を体の節々に仕込んではるで！
しかも良く見たらあの顔は敵対組織の首領、ドクター・バイソンやないか！！
自らの体を改造して巨大サイボーグにしはるなんてほんまに恐ろしいお方やで！
「悪魔に魂を売った孤高の天才ドクター」の二つ名に偽りなしやな！！
ドカーンズゴーン
ドクター・バイソンが両手のドリルを振り回してカイソクオーに迫っていっとるわ！
まるで40年前に戦争で家族を失った悲しい過去を打ち消すかのような猛攻やで！！
しかしそこは流石のキングカイソクオーや！！もはやお馴染みの武器、「キングカイソクセイバー」で
バイソンの攻撃を全て受け流してはるわ！剣道の達人でもある緒方みつるにしかできない芸当やな！！
やけどバイソンはこれほどの受けを見せられながらもなお不敵に笑ってるで！不気味な事この上ないわ！！
ちなみに奴の奥の手は自爆攻撃やで！！宇宙空間に放り出すんやキングカイソクオー！来シーズンもお楽しみに！！
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